由緒
和布刈神社は、本州と九州を隔てる関門海峡のうち、ひときわ幅が狭まる「早鞆ノ瀬戸(はやとものせと)」を見下ろす岬の高台に鎮座する神社です。社伝によれば、仲哀天皇9年(西暦200年)、三韓征伐から凱旋した神功皇后が、潮の満ち引きを司る神々への感謝を込めて創建したと伝えられ、弥生時代末期にまでさかのぼるおよそ1800年の歴史を有するとされています。かつては「速戸社(はやとしゃ)」「隼人社(はやとしゃ)」とも呼ばれ、江戸時代に至るまでその名で親しまれてきました。
御祭神は、潮の満ち引きを司る神として知られる撞賢木厳之御魂天疎向津媛命(別称・瀬織津姫)を中心に、日子穂々手見命(山幸彦)、その妃神である豊玉比賣命、二神の御子・鵜葺草葺不合命、そして海人族・安曇氏の信仰を集めた安曇磯良神の五柱が祀られています。海の神々を祀るにふさわしく、社殿は海峡に正対するように建てられており、建武3年(1336年)の足利尊氏による神殿造営をはじめ、至徳年間(1384〜1387年)の大内義弘による神領寄進、応永年間(1394〜1428年)の大内義弘による神殿造営、文亀年間(1501〜1504年)の大内義隆による神殿造営、天正3年(1575年)の仁保常陸介による神殿造営など、中世から近世にかけて大内氏・毛利氏をはじめとする歴代の領主から篤い崇敬を受け、幾度も社殿の修復・造営が重ねられてきました。
近年は「導きの神様」として再び注目を集めています。2009年に奉職し、2010年に32代目禰宜となった高瀬和信宮司のもとで、御朱印やお守りを一新するなど境内の整備が進められ、年間売上高はおよそ500万円から1億8000万円規模へと大きく成長したことが、2026年に東洋経済オンラインの特集記事でも取り上げられました。歴史ある海峡の守り神としての由緒を大切にしながら、現代の参拝者にも開かれた神社としての歩みを続けています。
和布刈神事
和布刈神社を全国に知らしめているのが、旧暦の大晦日深夜から元旦未明にかけて執り行われる「和布刈神事(めかりしんじ)」です。神功皇后が三韓征伐からの凱旋を祝い、自ら神主となって早鞆ノ瀬戸のワカメを刈り取り、神前に捧げたという故事に由来すると伝えられ、およそ1800年にわたって受け継がれてきたとされる古式ゆかしい神事です。
神事に先立ち、横代湯立神楽が奉納された後、狩衣・烏帽子・白たび・わらぞうりに身を包んだ3名の神職が、約3メートルもの大きな松明に先導されながら、身を切るような真冬の干潮の海へと分け入ります。松明の明かりだけを頼りに、瀬戸の岩に付いたワカメを一枚一枚手で刈り取り、神前に奉納するその光景は幻想的で、関門海峡の両岸に春の訪れが近いことを告げる風物詩として知られています。1958年(昭和33年)4月3日には福岡県の無形民俗文化財に指定され、現在もその年の暦に合わせて日程が定められています。
関門海峡を望む境内
境内からは、眼下に流れる関門海峡と、その上空にかかる関門橋を一望することができます。本州・下関側との距離がもっとも狭まる早鞆ノ瀬戸は、潮流の速さでも知られる海の難所であり、九州最北端の地にあって本州を間近に望むこの立地こそが、和布刈神社を特別な存在にしています。境内に立つ朱塗りの鳥居越しに海峡と関門橋を望む眺めは、参拝者に人気の撮影スポットとなっており、関門国道トンネルの門司側人道入口にも近いことから、門司港レトロ観光と合わせて訪れる参拝者も少なくありません。
ご利益
潮の満ち引きを司る神々を祀ることから、古くより航海安全・大漁祈願の神として漁業関係者の崇敬を集めてきました。また近年は「導きの神様」として、人生の節目や進路に迷ったときに参拝する人が増えています。豊玉比賣命をはじめとする女神も祀られていることから、縁結びのご利益でも知られ、旧暦元日の和布刈神事にちなみ、新しい年の開運・招福を祈願する参拝者も多く訪れます。
参拝のポイント
参拝時間は9:30〜17:00です。境内の駐車場は約50台分あり、車での参拝もしやすい一方、門司港レトロ地区からバスや観光列車で訪れることもでき、門司港駅周辺の観光とあわせて巡るのもおすすめです。関門橋と海峡を望む境内は特に夕景が美しく、天候に恵まれれば対岸の下関側まで見渡せます。和布刈神事が行われる旧暦元日前後は深夜からの神事となるため、防寒対策をしっかりして臨むとよいでしょう。
周辺のグルメ・観光
門司港レトロ地区には、大正・昭和初期の洋館建築が立ち並び、名物の焼きカレーをはじめとするご当地グルメを楽しめる店が数多くあります。関門海峡を挟んで対岸の下関市とは、関門国道トンネルの人道(徒歩・自転車専用)で結ばれており、歩いて県境を越える珍しい体験もできます。
よくある質問
- Q. 参拝時間は?
- A. 9:30〜17:00です。
- Q. 御朱印はいただけますか?
- A. はい、参拝時間内(9:30〜17:00)にいただけます。初穂料は500円です。
- Q. アクセス方法は?
- A. JR門司港駅から徒歩約25分のほか、西鉄バス4・74系統で「門司港駅前」から「和布刈神社前」まで約13分、下車してすぐです。門司港レトロ観光列車「潮風号」で関門海峡めかり駅まで行き、徒歩約5分でも到着できます。
- Q. 駐車場はありますか?
- A. 境内に参拝者用の駐車場が約50台分あります。大型観光バスは近隣の和布刈プール駐車場をご利用ください。
- Q. 和布刈神事とはどんな神事ですか?
- A. 旧暦の大晦日深夜から元旦未明にかけ、神職が関門海峡でもっとも狭まる早鞆ノ瀬戸の干潮時を見計らい、松明の明かりを頼りに海へ入ってワカメを手で刈り取り、神前に供える神事です。神功皇后が三韓征伐からの凱旋の折にワカメを刈って神前に捧げたという故事に由来すると伝えられ、約1800年の歴史を持つとされます。1958年(昭和33年)4月3日に福岡県の無形民俗文化財に指定されました。



